「学校改革」というのが、ボクが生まれる十年くらい前にあった。
おじいちゃんの頃は、近所の子供は、みんな、地域の同じ小学校に通ってたらしい。
どこの学校に通っても、同じようなカリキュラムをしていたんだって。
今は、小学校によって、いろいろな特色があるから、見学に行くと、びっくりする。
スポーツの設備が整った小学校、
工作や絵画をメインに勉強する小学校、
ほとんど毎日を外で生活する小学校など。
その中から、自分の行きたい学校を選ぶ。
転校は一度しか認められないから、真剣に選ばないとね。
では、ボクの小学校を紹介しよう。
1学年がだいたい20人、全校生徒120人くらいの学校だ。
学校に行くと、まず昇降口のホワイトボードに書かれた「今日の授業」を見る。
そこで受けたい授業のところに自分の名前のマグネットを貼る。
午前中の分と午後の分と、2つ。
それぞれの授業には、定員が決まっている。
ここでは、即決が大事なんだ。
1年生の頃は、選ぶのに時間がかかって、いつも残った授業を受けてた。
それはそれで、楽しかった。
受けたい授業がない時は、友達の名前の隣に自分の名前を貼ったり、
たまには、みんなが選ばなかった授業も受けてみたりする。
それから、自分が選んだ授業の部屋に移動する。
席がある時は、好きな席に座って、席がない時は、立って待っている。
3年生の頃は、待っているのも暇だから、タブレットで今日の授業に使いそうなことを先に調べていた。
役に立つ時もあれば、役に立たない時もあった。
4年生になった今は、友達とのコミュニケーションの時間にしている。
授業の最初に、先生が今日のテーマを発表する。
それについて、みんなで意見を出し合っていく。
先生は、後ろから見ていることが多い。
本当にピンチの時にだけ、アドバイスをくれる先生もいる。
ほとんどは、ボクたちだけで話が進んでいく。
自分の意見にみんなが賛成してくれるのも楽しいし、
自分が気が付かない方へ話が進んでいくのも楽しい。
先生はボクたちを信じてくれているし、
ボクたちは、どんなテーマでも真剣に考える。
みんなで1つのことを考えるって、学校でしかできないよなあ。
その時間内に終わらなかったテーマは、次の日の授業で同じテーマの時もある。
今日、分からなくても、明日になったら、分かったりして、それも楽しい。
給食を食べて、昼休み、掃除。
午後の授業に参加して、下校。
まあ、ボクの小学校は、こんな感じ。
もちろん、ボクも、この小学校が気に入っている。
だけど、一つだけ、不満がある。
ボクの家から小学校までが、遠い。
朝は、父ちゃんに送ってもらえるが、帰りはバスだ。
バスだと1時間くらいかかる。
今日は、バスの中で何をしようかな、と考えている最中にバスが来た。
バスの中には、小さな子を連れた人やお年寄りとか5人くらいが乗っている。
ボクは、ぼんやりと外を眺めていた。
バスの揺れが心地よい。
1年生の時は、バスで寝ちゃって、よく運転手さんに起こしてもらっていた。
突然、バスが止まった。
バス停じゃないのに、なんで?
運転手さんが、外に出て、また戻ってきた。
「すみません。パンクです。
代わりの車が来るまで、こちらでお待ちください。」
「どれくらいかかりますか?」
子供連れの人が聞く。
「30分くらい、かかると思います。
申し訳ありません。」
運転手さんが頭を下げている。
30分かあ。
窓の外に公園が見えた。
あそこの公園なら、バスも見えるし、ちょっと遊んでこようかな。
ボクは、道路を渡って、公園に入った。
なんか、古そうな公園。
見たこともない遊具が置いてある。
トンネル?
いや、ドカンだ。
昔の本で見たことがある。
入るのは、初めてだ。
中は、ひんやりしていて、暗いなあ。
もうすぐ出口だ。
「痛い!」
ドカンに頭をぶつけた。
いたたたた。
頭をさすりながら、外に出ると、そこは、知らない小学校の校庭だった。