頭をさすりながら、外に出ると、そこは、知らない小学校の校庭だった。
「マコトくん、おはよう。」
「マコトー、おはよー。」
みんながボクにあいさつをする。
マコトって誰だ?
胸にある名札を見て、驚いた。
おじいちゃんの名前が書いてある。
ボクは、おじいちゃんなのか?
ボクは友達と一緒に学校内に入る。
周りを見たけど、今日の授業のホワイトボードがなかった。
友達の話を聞きながら、階段を上って、4年生の教室に入った。
落ち着け、落ち着け、と何度も心の中で唱える。
好きな席に座ったら、
「マコトの席は、あっちだよ。」
と笑われた。
席が決まっているんだ。
ずっと背負っていたランドセルを下ろした。
急に体が軽くなった。
肩が痛い。
あれ、頭の痛さが消えている。
頭を触ったけど、タンコブはできてないみたいだ。
チャイムがなって、
「授業を始めます。教科書を開いて。」
と、先生が言う。
みんなが教科書を開く。
ボクは、どんなテーマなのか、ワクワクしながら、先生の顔を見ていた。
でも、先生は、ずっと話し続け、ほとんどの子は聞いているだけ。
先生が黒板に字を書いて、みんながノートに字を書いた。
チャイムがなって、みんながガヤガヤしはじめた。
「やっと、話し合いの時間?
ボク、今日のテーマが分かんなかったんだけど。」
「今は、休み時間だよ。」
「休み時間?」
マジか、そんな時間があるのか。
休み時間は、午前中だけで4回もあった。
こんなに休んでいたら、全然、集中できないよ。
それに、みんなは、座って、先生の話を聞いているだけだ。
ボクの学校では、先生は、こんなに話さない。
ボクの学校は、生徒が主役、先生はサポート役だ。
おじいちゃんの学校は、先生が主役で、生徒は観客みたいだ。
ボクは一言も話していないのに、授業が終わっていく。
4時間目は、あくびが止まらず、先生に厳しく注意された。
給食を食べて、午後の授業を受けて、やっと下校だ。
ホントに、「やっと終わった」と思った。
どんだけ長い時間を学校で過ごしていたのかと時計を見たけど、
ボクの学校と下校時間が同じで、またびっくりした。
早く帰りたい。
バス停を探して、キョロキョロしていたら、友達が一緒に帰ろうと誘ってくれた。
バスじゃなくて、みんなで歩いて帰るらしい。
しばらく、友達の話を聞きながら歩いた。
最初は、大勢いたのに、1人、1人、と別れていく。
やばい、ボクは家が分からない。
「ボクの家、知っている?」
隣を歩く子に聞いたら、大笑いされた。
「何の冗談だよ。
おれの隣の隣だろ。
ランドセル置いたら、公園に集合な。」
良かった。
この子の隣の隣の家に帰ればいいんだ。
家に着き、ランドセルをおろして、公園に走る。
友達が何人か集まっている。
みんな、同じ学校なんだ。
帰る時間が同じだから、遊び始める時間も同じ。
下校の時に、遊ぶ約束もできるし、家の近くで遊べる。
放課後に、こんなに友達と遊べるんだ。
地域の学校って、楽しいかも。
久しぶりに、かくれんぼをした。
ボクは、ドカンの中に隠れた。
「みーつけた。」
ドカンを出ようとして、頭をぶつけた。
いたたたた。
頭をさすりながら、外に出ると、バスの運転手さんが待っていた。
あ、そうだ。
バスがパンクしたんだった。
あれ、頭が痛い。
パンクしたバスの代わりにきた車で、いつものバス停まで送ってもらった。
揺れる車内で、考えていた。
さっきのは、夢だったんだろうか。
頭を触ると、タンコブができていた。
次の日。
帰りのバスから昨日の公園を見つけた。
ボクは、次のバス停で降りた。
昨日と同じ、古そうな公園。
ドカンの中を覗く。
恐る恐る入ってみた。
出口の近くで、また頭をぶつけた。
「いたたたた。」
頭をさすりながら、外に出ると、そこは、昨日の小学校だった。