ママは、ハシビロコウ 【創作童話】

台を持ってきて、冷蔵庫を開ける。

冷蔵庫から、牛乳を取って、テーブルに運ぶ。

よし!

「ママ、牛乳、開けて!」

「えー。」

「わたしじゃ、できないの。」

「ママも、できないの。」

ときどき、ママはハシビロコウになる。

ぜんぜん、うごかない。

 

そんなときはー

さくせん、そのいち。

ママの好きな歌を歌う。

「ドは、ドーナツのド〜

 レは、レイゾウコのレ〜

 ミは、セミのミ〜

 ファは、ファミレドのファ〜」

「何、その歌は。」

「ママの大好きな歌だよ。」

「ありがとう。

 牛乳を開けるのね。」

ほらね、さくせん、だいせいこう!!

 

台を持ってきて、食器棚を開ける。

ガーン、コップが届かない。

よし!

「ママ、コップ取って。」

「えー。」

「わたしじゃ、できないの。」

「ママも、できないの。」

ときどき、ママは、ハシビロコウになる。

ぜんぜん、うごかない。

 

そんなときはー

さくせん そのに。

チョコをあげる。

お菓子ボックスから、チョコを持ってくる。

包みからチョコを出す。

「ママ、お口、開けて」

「なに、なに。

 怖いんだけど。」

「大丈夫だって。」

ママの口にチョコを入れる。

「ありがとう。

 コップを取るのね。」

ママが私を抱っこする。

コップを2つ取って、運ぶ。

ほらね、さくせん、だいせいこう!!

 

コップに牛乳を入れる。

ママのコップにも、牛乳を入れる。

よし!

「ママも、飲んで。」

「ありがとう。」

「おいしいね。」

「おいしいね。」

お便り帳を持ってくる。

「ママ、お便り帳に、

 『牛乳、飲みました』って書いて。」

「えー、なんで?」

「お友達が書いてたの。」

「はあ。」

「わたしじゃ、できないの。」

「ママも、できないの。」

ときどき、ママは、ハシビロコウになる。

ぜんぜん、うごかない。

 

そんなときはー

さくせん そのさん。

ママをむぎゅーっとする。

「ママ、だいすきー。」

「ママも、大好き。」

ママが、ぎゅーとしてくれる。

「ありがとう。

 お便り帳に書くのね。」

ほらね、さくせん、だいせいこう!!

 

「飲んだら、片付けようね。」

「はーい。」

お盆を持ってきて、コップを乗せる。

一瞬で、片付けちゃうよ。

ダダダダダ。

『ガッシャーン!』

コップが落ちて、割れた。

「大丈夫?

 ケガしてない?

 危ないから、離れてて。」

ぜんぜん、うごかないハシビロコウのママが、とんできた。

 

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