りっちゃんは、髪が長くて、いつも可愛く結んでいます。
活発なこっこちゃんと、のんびり屋さんのりっちゃん。
りっちゃんは、こっこちゃんの初めてできたお友達です。
でも、もうすぐ、引っ越ししてしまいます。
もう、こども園で一緒に遊べなくなってしまいます。
その前に、こっこちゃんのお家で引っ越しパーティーをすることにしました。
お菓子は、こっこちゃんの好きなおせんべいと、
りっちゃんの好きなクッキーを用意しました。
お部屋も、こっこちゃんがキレイに飾りました。
今日で、こっこちゃんとりっちゃんが遊ぶのは最後です。
りっちゃんは、ハート型のクッキーをおいしいと食べます。
こっこちゃんは、丸いせんべいをおいしいと食べます。
二人がお菓子を食べ終わっても、ママたちは、まだお話ししています。
「ママ、お庭で遊んでもいい?」
「いいよ。」
こっこちゃんとりっちゃんは、嬉しそうに外に駆け出しました。
こっこちゃんのお庭には、砂場があります。
いつも、ここで、ケーキ屋さんやお弁当やさんごっこをして遊んでいます。
「なんか、いいにおいがするー。」
「うん、いいにおいがする。」
二人は、においのする方へ歩いていきました。
「こっちかな?」
「こっちだよ。」
ジャスミンの白い花が咲いています。
「これだあ。」
「うん、これだね。」
二人は、思いっきり、ジャスミンの香りを吸い込みました。
思いっきり息を吸い込んで、目を開けると、
目の前に、もこもこのひつじが立っていました。
「ジャスミンの国へ、ようこそ。」
二人は、目をパチクリしています。
ひつじは、続けて言いました。
「今日は、スペシャルデーです。
ひこうき雲が一日貸し切りです。」
ひつじが紙吹雪をパラパラと空に投げました。
すると、目の前にひこうき雲が飛んできました。
りっちゃんは、「うわー」と目をキラキラさせて、
こっこちゃんは、飛び跳ねて、喜んでいます。
ひつじが、「どうぞ」というので、
二人は、そうっと、ひこうき雲に乗りました。
「すごーい。」
「ふわふわしてる。」
二人が座ると、ひこうき雲は、あっという間に空の上まで飛びました。
「どこに行きましょうか?」
ひつじが二人の答えを待っています。
「うーんと?」
「えっとー?」
りっちゃんも、こっこちゃんも、クスクス笑っているだけで、全然決まりません。
それを見ていたひつじが言いました。
「では、私のオススメコースをご案内いたします。」
ひこうき雲が動き出します。
最初に着いたのは、いつも通っているこども園。
初めて、空から、こども園を見ました。
「ちっちゃいね。」
「こんなに、ちっちゃい。」
こっこちゃんは、親指と人差し指で、こども園の大きさを表しました。
次は、一緒に遊んだ公園、一緒に行ったプール、りっちゃんのお家・・・。
りっちゃんとこっこちゃんの二人だけの空の旅。
どこに行っても、二人はニコニコ、クスクス、キャハハと、
とっても楽しそうです。
遠くでママの声が聞こえました。
「りっちゃーん。こっこちゃーん。」
「あ、ママが呼んでる。」
「帰る時間だあ。」
二人は、残念そうに言いました。
いつの間にか、ひこうき雲は、こっこちゃんのお庭に戻っていました。
「では、思いっきり、ジャスミンの香りを吸い込んでください。」
りっちゃんとこっこちゃんは、帰りたくないので、吸い込みません。
「また、いつでも、きてください。」
ひつじは、優しく、微笑みました。
りっちゃんは、モジモジしています。
こっこちゃんは、ひつじに言いました。
「りっちゃんは、お引っ越しちゃうの。
今日で、遊ぶのは、おしまいなの。」
こっこちゃんは、りっちゃんと手をつなぎました。
「いつでも、ひこうき雲で迎えに行きますよ。
また、会いましょう。」
ひつじは、にこっと笑いました。
「また会えるの?」
「はい。
また、お二人で来てください。」
りっちゃんとこっこちゃんは、元気よく返事をしました。
「はい!」
二人は、思いっきりジャスミンの香りを吸い込みました。
夕焼けが空をピンク色に染めています。
りっちゃんとりっちゃんママが帰っていきました。
こっこちゃんは、ママとお部屋のお片付けをしています。
「ママ、きょうね、とってもいい匂いのお花を見つけたの。」
「へえ、どこにあったの?」
こっこちゃんは、窓の外のジャスミンの木を指さしました。
「あー、ジャスミンの花ね。
ママも、好きよ。
ジャスミンのお茶も、とっても美味しいのよ。」
「お茶?飲みたい。飲みたい。」
「そうね。
ママも久しぶりに飲みたいから、今度、買ってこようね。」
それから、月日は流れ、こっこちゃんは、素敵な大人になりました。
今日は、大切な友達とランチを食べています。
オープンテラスの席で、その友達と楽しそうに話すこっこちゃん。
「おまたせいたしました。」
店員さんが二人のテーブルにジャスミン茶をおきました。
「この香り、大好き。」
「癒やされるよね。」
笑うこっこちゃんの前に、大人になったりっちゃんが座っていました。