もうすぐ、授業参観がある。
今回は、身の回りのSDGsを調べて、発表をする。
オレは、まだ、17の目標のうち、どれにするかも決まっていない。
「よーく、周りを観察してみると、意外な発見があるかもしれません。」
と、先生はいう。
結局、宿題になった。
家にいるのは、父ちゃんと母ちゃんだけだ。
親を観察しても・・・ねえ?
母ちゃんは、毎日うるさい。
「脱いだ靴下は、ここに置かない。」とか
「テレビは離れてみる。」とか。
本当は、自分の部屋に行って、宿題をしたいけど、
先生が周りを観察するように、と言ってたので、
仕方なく、リビングに座っている。
母ちゃんは、あっちに行ったと思ったら、
いつの間にか、戻ってきていて、
部屋の片付けや掃除、洗濯物を畳んだり、食器の片付け・・・
何かと忙しそうに動いている。
それだけじゃなく、オレがリビングにいるから話しかけてくる。
「宿題は?」
「今、やってる。」
母ちゃんは、なんで、うるさいんだろう。
そう思いながら、17の目標が書かれたプリントを眺める。
「今日の夕飯、なに食べたい?」
「なんでもいい。」
全然、集中できない。
あ!
オレは、ひらめいてしまった!
授業参観、当日。
オレの発表の順番がきた。
「ぼくは、3個目の目標『すべての人に健康と福祉を』について、発表します。
健康とは、心身ともに健やかでいることです。
健康でいるためには、食事、運動、睡眠が大切です。
福祉とは、幸せや豊かさを意味する言葉です。
人を幸せにすること、よりよく生きることです。
ぼくのお母さんは、いつも、ぼくたち家族の健康を考えて、
ご飯を作ったり、早く寝るように言ったりします。
ぼくのお父さんは、ぼくが幸せで、よりよく生きられるように、
どこかへ遊びに連れて行ってくれたり、
社会のルールを教えてくれたりします。
家族みんなが健康でいられるように
家族みんなが安心して暮らせるように
我が家の「すべての人に健康と福祉を」は、
お父さんとお母さんが守ってくれています。
だから、ぼくの身の回りのSDGsは、両親です。
これからは、両親の話をもう少し聞こうと思いました。
これで、ぼくの発表を終わりにします。」
授業参観の発表は、うまくいった。
その日から、母ちゃんが自信満々に言う。
「ほら、エスジーズよ。残さず食べる。」
「エスジーデイズ。早く寝なさい。」
母ちゃんは、SDGsが言えない。
先生が言っていた意外な発見とは、このことだったのか・・・。