ティータイム【創作童話】

ベビーカーでの散歩は気分転換になる。

こどもと景色を見たり、

近所の人と話したり、

公園で一休みしたり、

こどもが寝てしまったり。

 

今日もベビーカーで散歩をしている。

風が気持ち良い。

どこかの家からお茶の良い香りがした。

そういえば、こどもが生まれてから、

お茶を淹れることはなくなった。

熱いお茶をこどもが触ったら危ないし、

淹れたては飲めないし。

 

しばらく散歩をしていると、

またお茶の香りがした。

ゆっくりお茶が飲めるのは、いつかな?

二歳?三歳?もっと先なのかな?

ベビーカーのこどもを覗き込んだら、眠っていた。

あくびしてたから、眠かったんだ。

もう少し散歩しようかな?

でも、今から帰れば・・・

こどもが寝ている間にお茶が飲めるかもしれない。

 

静かに急ぎ足で、自宅に向かう。

なんのお茶があったかな?

緑茶?紅茶?

お友達からもらった美味しいお茶があったはず。

 

そうっと、カギを開ける。

そうっと、ベビーカーを玄関の中に入れる。

そうっと、ドアを閉める。

抱っこしたら、きっと起きてしまう。

このまま、こどもはベビーカーで寝かせておこう。

 

お湯を沸かす。

友達からもらったお茶があった。

これ、これ。

お湯が沸くまで、あと少し。

祈りながら、待っている。

どうか起きないで。

あと少し。

「うわーうぎゃーぎゃー。」

沸騰したのと同時に、こどもが起きた。

慌てて、火を消す。

駄目かあ。

 

ベビーカーのこどもを抱きかかえた。

あと少し、寝ててくれても良かったんだけどね。

縦向きに抱っこして、こどもの背中をトントンする。

汗かいているなあ。

暑かったんだね。

とりあえず、泣き止んだので、こどもを座らせて、水分補給。

こどもがストローマグでゴクゴク飲んでいる。

今日のお茶は、諦めようかな?

ヤカンから湯気が出ている。

チラチラこどもを見ながら、キッチンへ。

ティーポットにお湯を注いだ。

ティーポットの中でゆっくりゆっくり花が咲いていく。

良い香りが広がっていく。

友達がくれた工芸茶。

うっとりしていたら、こどもが足にしがみついていた。

「見て、見て。」

こどもの手がポットに届かない様に離れて抱っこする。

「お花、咲いてるね。」

こどもが不思議そうに手を伸ばす。

「お茶のお花だよ。きれいだね。」

 

二人でお湯の中に咲いた花を眺めた。

こんなティータイムもあるんだね。

 

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