ママは占い師 【創作童話】

わたし、こんなに細いところを歩けるよ。

「ママ、見て、見て!」

歩道の段差の上を歩く。

「ほら、前見て歩いて。転ぶよ。」

ドテッ。

「ほら、ママの言ったとおりでしょ?」

いたたたた。

 

わたし、こんなに上手にお水を運べるよ。

「ママ、見て、見て!」

コップの水をテーブルまで運ぶ。

「ほら、ちゃんと持って。こぼすよ。」

ビチャー。

「ほら、ママの言ったとおりでしょ?」

あちゃちゃちゃ。

 

ママは、いつも、私が失敗するのが分かる。

どうしてなの?

もしかして、ママは占い師?

 

ママは、どうやって占っているんだろう?

ママは、どうして失敗することばかりを占うんだろう?

もっと、嬉しいことを占ってくれたらいいのに。

 

そうだ、ママに聞いてみよう。

「ねえ、ママ。」

ママの方を振り向いて、話しかける。

「ほらほら、前見て歩く。ぶつかるよ。」

ゴン!

「ほら、ママの言ったとおりでしょ?」

ムカムカムカッ!

「ママ!もっと嬉しいことを占ってよ!」

「占い?」

ママは、不思議そうにわたしを見る。

「ママは占い師なんでしょ?

 いつも、ママの言ったとおりでしょって言う。

 どうして、いつも失敗ばかり言うの?

 もっと嬉しいことを占ってよ!!」

「嬉しいことって?」

「今日は、ドーナツが食べられますよ。とか!」

ママは、「うーん」と腕組みして考えている。

もしかして、ママは嬉しいことは占えない占い師なの?

 

数日後。

ママとお出かけ。

わたしも、お気に入りのバッグを持っていく。

ママと歩いていると、

「あっ!手紙、持ってくるのを忘れた!」

と、ママが言う。

「手紙って?」

「玄関に置いておいたの。

 出かけるときに出そうと思ってたのに。。。。」

わたしは、バッグから手紙を出した。

「手紙って、これのこと?」

「なんで、持ってるの?」

「ママが忘れちゃうと思って、持ってきたの。」

「ありがとう!!」

ママがわたしを抱きしめてくれる。

「わたし、占い師みたい?」

「うん、占い師みたい。

 そうだ。今日は、ドーナツが食べられるよ。」

「本当?」

「もちろん。

 だって、ママは占い師だもん。」

 

 

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