鬼の赤ちゃん【創作童話】

赤鬼夫婦に赤ちゃんが生まれた。

オギャー、オギャーと元気な声。

赤ちゃんの顔を覗いた赤鬼父ちゃん、

首をかしげた。

赤ちゃんは、黄鬼だった。

 

「なんてこった!

 鬼のパンツを履かせたら、

 まるでトラの赤ちゃんだ。」

 

「あーあ、せめて白鬼だったらなあ。

 赤鬼父ちゃん、白鬼赤ちゃん、

 並んで紅白おめでたい。」

 

赤鬼父ちゃん、毎日毎日、

黄鬼赤ちゃん抱っこして、

どこか具合が悪いのか?

すごく弱い鬼なのか?

全身眺めて、確かめる。

 

「オギャー、オギャー」と元気よく

黄鬼の赤ちゃん大泣きだ。

「こんなに大声で泣く鬼は

 おいらの赤ちゃんに違いない。

 きっと立派な赤鬼になる。」

赤鬼父ちゃん、信じて待った。

 

しかし、いくら月日が流れても、

黄鬼の赤ちゃん、黄鬼のまま。

いっそ、森に捨ててこようか?

トラに育ててもらおうか?

赤鬼父ちゃん、頭抱えて悩んでる。

 

赤鬼父ちゃん、黄鬼赤ちゃん抱っこして、

ひと山越えて、ふた山越えて、散歩した。

ひと山、ひと山越えるたび、

どんどん寒くなっていく。

鬼のパンツは温かい。

 

みつ山越えたら、雪景色。

鬼のパンツは、温かい。

黄鬼赤ちゃん、元気に笑う。

 

赤鬼父ちゃん、岩に腰掛け、一休み。

北風吹くと、甘い香りがやってくる。

甘い香りに誘われて、赤鬼父ちゃん歩いてく。

歩いた先に、黄色い花が咲いていた。

 

雪が残る人里に、

見事に咲いた黄色い花。

「なんて美しい花なんだ。」

思わず、黄鬼赤ちゃんに

そっと一枝取ってやる。

 

幹に名前が書かれてた。

「蝋梅」の文字を見て、

赤鬼父ちゃん、喜んだ。

「梅」は、赤鬼父ちゃんの好きな花。

「梅」は、寒さの中咲く、赤い花。

 

赤は強い色。

赤は立派な色。

赤は・・・

 

寒さの中、立派に咲く蝋梅の美しさ。

赤鬼父ちゃん見とれてた。

黄色の梅も、あるんだな。

黄色の梅も、美しい。

赤じゃなくても、美しい。

 

赤鬼じゃなくても・・・

赤鬼にこだわらなくても・・・

黄鬼のままでも・・・

この子なら・・・

この子なら、おいらの赤ちゃんなら、

立派な鬼になるはずだ!

 

赤鬼父ちゃん、黄鬼赤ちゃん抱きしめて、

ひと山、ふた山、みつ山越えて帰っていく。

ひと山、ひと山越えるたび、

どんどん暖かくなっていく。

心もホカホカ温かい。

鬼のパンツも温かい。

 

赤鬼父ちゃん、誇らしげ。

黄鬼赤ちゃん、元気よく。

蝋梅の花、静かに揺れる。

 

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