毎日、掃除を頑張っているぞうきん。
「自分が何かをキレイにできるって、素晴らしいことだ。」
掃除することに、生きがいを感じていました。
「今日も、部屋をピカピカにしたぞ。」
ぞうきんは嬉しそうにバケツに掛かって休んでいました。
ふと見ると、キレイに洗った手をポケットから出したハンカチで拭いていました。
そのハンカチは、とても華やかな柄でした。
ぞうきんは、自分の姿を見て、驚きました。
汚れて、所々擦り切れています。
もともとは、真っ白なぞうきんでした。
「いつの間に、こんな姿になってしまったのだろう。」
何かをキレイにする代わりに、自分が汚くなっていたなんて・・・。
夜、家中の布たちの集まりがありました。
ぞうきん、ハンカチ、ランチョンマット、台拭きなどが
いろいろな場所から集まってきました。
今までは、意気揚々と参加していたぞうきんでしたが、
今夜は元気がありません。
ぞうきんは、みんなに言いました。
「今まで、自分が何かをキレイにすることが誇りだった。
でも、今日、気がついたんだ。
自分を犠牲にしていたことに。」
「どうしたの?急に。
私だって、今日、スパゲッティをこぼされた。
でも、それが私たちの役目じゃない?」
ランチョンマットは、オレンジ色の汚れを見せた。
「そうよ。テーブルがキレイなのは、私のおかげよ。」
台拭きが角についた汚れを自慢気に見せた。
「でも、ハンカチはキレイな手を拭いているから、汚れない。
ハンカチはキレイなままだ。」
ぞうきんがぼそっと言うと、
「ほんと、汚れがちっともないわ。」
台拭きが言いました。
布たちは一斉にハンカチを見ました。
「汚れは、使ってもらっている証拠じゃない?」
ハンカチは、控えめに言いました。
「ハンカチは使われても、キレイなままだ。」
ぞうきんは、汚れた部分を見せた。
「それは、使われている時間が長いからよ。
掃除をしている間、ぞうきんを洗っている間、、、、
長い時間、使ってもらっているじゃない?
ハンカチが使ってもらえるのは、手を拭く、ほんの一瞬よ。
あとは、ずっとポケットの中なのよ。」
ハンカチは、みんなの反応を待ちました。
「そうね。私も食事の時間は、ずっとテーブルで使ってもらっている。」
ランチョンマットも言いました。
「私も、ほとんど、テーブルの上にいるわ。」
台拭きも言いました。
「使ってもらう時間が長い・・・だから、擦り切れちゃったのか。」
ぞうきんは、少し納得をしました。
もうすぐ朝です。
布たちは、自分の居場所に帰って行きました。
ぞうきんは、バケツに掛かって、
台拭きは、テーブルの上、
ランチョンマットは洗濯機の中、
そして、ハンカチはバッグの中へ。。。
バッグの中に入ったハンカチは思いました。
「もう何ヶ月、ここにいるんだろう。」
「いつになったら、使ってもらえるんだろう。」
「忘れられて、ずっと使われないキレイなハンカチより、
擦り切れるまで使ってもらえるぞうきんの方が幸せよ。」
ハンカチはつぶやきました。