緑の山の奥深く、魔女のショコラが住んでいました。
ショコラは魔女になったばかり。
まだまだ上手に魔法が使えません。
毎日、魔法のトレーニングをしています。
緑の山の東側、クロンヌ王子が住んでいました。
クロンヌ王子はケーキが大好きです。
願いは、毎日ケーキを食べること。
ある日、クロンヌ王子は山の奥に魔女のショコラがいることを知りました。
魔女に頼めば、毎日ケーキが食べられるかもしれない。
クロンヌ王子は早速、魔女のショコラに会いに行きました。
クロンヌ王子は、魔女のショコラに言いました。
「魔法で毎日ケーキが食べられるようにしてくれないかい?」
魔女のショコラは頼られると「ノー」とは言えませんでした。
「チャレンジしてみるわ。」
クロンヌ王子は喜んで帰りました。
魔女のショコラは上機嫌で、友達のハニービーに言いました。
「クロンヌ王子から魔法の依頼がきたのよ。
すごいでしょ?これで、私も立派な魔女の仲間入りだわ。」
「本当にすごいわ。
私はずっと、ショコラが魔女になる日を想像していたの。
本当にそんな日がくるのね?」
魔女のショコラは、張り切っていました。
毎日ケーキを食べられる魔法・・・
分厚い魔法の本をペラペラめくって探してみました。
「果物がなる」魔法を、「ケーキがなる」魔法に変えられるかしら?
それとも、「毎日同じ花が咲く」魔法を「毎日ケーキが出る」魔法に変えようかしら?
そうはいっても、魔女のショコラは、まだ魔女になったばかり。
魔法の本とおりに呪文を唱えてみても、うまく魔法が使えません。
それなのに、魔女の上級者でも難しい、
別々の魔法を合わせて新しい魔法を作ることに挑戦するなんて。。。
それでも、魔女のショコラは諦めません。
一週間経っても、二週間経っても、魔女のショコラから連絡はきませんでした。
クロンヌ王子は待ちきれなくなって、魔女のショコラに会いに行きました。
「そろそろ、魔法が完成したころだと思って来てみたんだ。
調子はどうだい?」
「ええ、なんていうか・・・まあまあ順調よ。」
「それは、素晴らしい。
できたら、明日、お城でお披露目会を開きたいのだが・・・」
「え?明日?
ええ、でも、明日はそうね、あ、魔法が使いづらい日だわ。
そうそう、3日後がちょうどいいわ。」
ノーと言えない魔女のショコラ、笑顔が歪んでいます。
「では、3日後、お城で待っていますね。」
「どうしよう。どうしよう。どうしよう。」
魔女のショコラは息を切らして、ハニービーのところへやってきました。
「お城で魔法を披露することになったの。
どうしよう。
まだ、魔法が完成していないの!」
「私はずっと想像してた。ショコラが魔女になれる日を。
そして、ショコラは魔女になった。
だから、ショコラも想像してみて。きっとうまくいくわ。」
それからも、ショコラは新しい魔法を考えていました。
どれとどれを合わせたらうまくいくのかしら?
分厚い魔法の本は、もう何百回も読みました。
いよいよ明日がお城に行く日です。
心配になったハニービーが魔女のショコラに会いにきました。
「ねえ、想像して、きっとうまくいくわ。」
想像したいわよ、私だって・・・うまくいくって想像したいわ・・・
想像・・・想像・・・
待って、確か・・
魔女のショコラは、分厚い本をもう一度開きました。
そうよ、なんで新しい魔法をつくることばかり考えていたのかしら?
この魔法があったじゃない。
この魔法を完璧にできるようにしよう。
きっとうまくいくわ。
翌日、魔女のショコラはお城に招かれました。
友達のハニービーも一緒です。
「では、お願いします。」
クロンヌ王子が言いました。
魔女のショコラは大きな声で呪文を唱えました。
「グリンデルベルグ!!」
すると、どうでしょう。
テーブルには次々とケーキが並んでいきます。
クロンヌ王子の前には大きなケーキ。
ハニービーの前にはかわいいケーキ。
魔女のショコラの前にはチョコのケーキ。
「ワンダホー!!」
クロンヌ王子は喜んで、大きなケーキを食べ始めました。
「すごいわ!やっぱり、私が想像していた通りだわ。」
ハニービーも大喜びです。
「想像が現実になる魔法をかけたの。
クロンヌ王子は毎日ケーキを食べられること想像をしていたからね。
想像したことがケーキになるの。素敵でしょ?」
魔女のショコラがハニービーにウインクしました。
グリンデルベルグのショーケースに並ぶケーキは、
どれも見ていてワクワクして楽しいです。
見てもかわいい、食べても美味しいケーキです。