空と笑う【創作童話】

1歳児は、よく走る。

オムツの大きなお尻で、よく走る。

そして、よく転ぶ。

 

今日は、たくさん走れるように

芝生の公園に来た。

 

1歳児が走る。

1歳児が転ぶ。

こどもを助けようとして、ママも一緒に転んだ。

ママの腕に1歳児の頭。

良かった。頭は無事だ。

 

1歳児がすくっと立ち上がって、

寝ているママの腕にドカッと座る。

にかっと笑う。

わざと転んだ?

転ぶのが楽しくなっちゃった?

オムツをした大きなお尻がママの腕に何度もドカッと座る。

座っては、キャッキャと喜んでいる。

あ!

本当に転んで、芝生に頭がついた。

 

二人で芝生に寝転んで、空を見上げた。

久しぶりに、空を見上げた。

「そ、ら」

空を指さして、1歳児に教える。

「あ。」

挙げた指にトンボが止まった。

 

空とトンボ。

「アー、アー。」

1歳児が手を伸ばしたら、トンボが飛んでいった。

 

二人で芝生に寝転んで、空を見上げる。

「そ、ら。」

空を指さして、1歳児に教える。

「あ。」

紙ひこうきが飛んできた。

 

空と紙ひこうき。

「すみません。」

男の子が取りに来て、紙ひこうきを持っていった。

 

二人で芝生に寝転んで、空を見上げる。

「そ、ら。」

空を指さして、1歳児に教える。

「あ。」

飛行機が飛んでいる。

 

空と飛行機。

「スマイルマーク!」

ひこうき雲でできたスマイルを残して、飛行機は飛んでいった。

 

「アー、アー。」

1歳児が立ち上がって、空に手を伸ばす。

空のスマイルに、手を伸ばす。

「あ。」

転んだ。

 

二人で芝生に寝転んで、空を見上げる。

「あははは。」

なんだか、おかしくなって、笑った。

「ケラケラ、ケラケラ。」

1歳児も真似して、笑った。

 

空と笑う。

「今日もいい日だ。」

1歳児がすくっと立ち上がって、走りだした。

 

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