泣いた時の正しい対処方法【創作童話】

君は、毎日よく泣く。

 

「お腹が空いた」と泣いて、

「これじゃない」と泣いて、

「できない」と泣く。

 

今日は、仕事もうまくいかなくて、

それなのに、君は今日も泣いて、

泣きたいのは、私の方なのに・・・。

 

今日は、なんで泣いているの?

「服に手が引っかかった」と泣いている。

そんなことで、泣くなよ。

 

君の手を服から出してあげた。

でも、まだ泣いている。

「ワーワー」と大きな声で泣いている。

 

「どこか痛かったの?」と聞いても、

ギューと抱きしめても、

「ワーワー」と大きな声で泣いている。

 

もう、泣くなよ。

そんなに、泣くなよ。

泣きたいのは、私も一緒だよ・・・。

 

君の真似をして、泣くふりをした。

「えーん、えーん」と泣く真似をした。

君のように、涙なんか出ない。

それでも、君と同じくらい大きな声で、

「えーん、えーん」と泣く真似をした。

 

君は、びっくりして、泣き止んだ。

 

君は、心配そうな顔をして、私の顔を覗いている。

 

君は、私の頭を「よしよし」となでた。

 

本当はね、

君が泣いている時、うるさいと思っていた。

どうしたら、泣き止むのかと思っていた。

 

でも、ちがったね。

大声で泣くって、大人になったらできないんだね。

大声で泣くって、君にしかできないんだね。

 

私は、泣いてないよ。

本当は、君みたいに泣きたいけど、涙が出ない。

なのに、君は・・・

 

私を心配して、泣くのをやめた。

私の頭を「よしよし」した。

本当に泣いているのは、君なのに。

 

泣いている人がいたら、泣きやむんだね。

泣いている人がいたら、心配するんだね。

泣いている人がいたら、「よしよし」するんだね。

 

そんな当たり前なことを

そんな大切なことを私は忘れていた。

そんな大切なことを君は知っていた。

 

・・・私の目から、涙がポタポタ流れた。

 

君は小さな手を伸ばして、私の涙を拭いた。