創作童話

旅立ちの朝【創作童話】

朝、窓を開け、空を見上げた。 雲一つない青い空。 風もない。 今日が晴れで良かった。 今日から、こどもが一人暮らしを始める。 生まれた時、あまりに小さくて、落としてしまいそうで怖かった。 お風呂に入っていたら、眠ってしまって、出るに出られなくな…

にじいろのこ【創作童話】

わからなくなっちゃった? むずかしくなっちゃった? いっぱい ないて いいんだよ いっぱい おこって いいんだよ おとなのことばに きずつかなくていい おとなのことばを ぜんぶ しんじなくてもいい いっぱい わらって いいんだよ いっぱい ふざけて いいん…

このお茶は【創作童話】

「はい、お茶でも飲んで。」 仕事で行き詰まった時、 そっとお茶を出してくれた人がいた。 湯呑から湯気が上っていく。 熱いお茶に息を吹きかける。 お茶の香り、お茶の渋味、 お茶のおかげで、一息つけた。 あまりに嬉しかったので、知り合いにその話をした…

赤ちゃんロボット【創作童話】

政府が少子化対策として、 結婚後3年経っても子供がいない夫婦に 赤ちゃんロボットのお世話を半年間させるという政策を出した。 そして、私達夫婦にも、三回目の結婚記念日にその連絡がきた。 私達夫婦は共働きなので、 赤ちゃんロボットをお世話するために…

鬼の赤ちゃん【創作童話】

赤鬼夫婦に赤ちゃんが生まれた。 オギャー、オギャーと元気な声。 赤ちゃんの顔を覗いた赤鬼父ちゃん、 首をかしげた。 赤ちゃんは、黄鬼だった。 「なんてこった! 鬼のパンツを履かせたら、 まるでトラの赤ちゃんだ。」 「あーあ、せめて白鬼だったらなあ…

カラスになりたい 【創作童話】

とても暑い日、カラスは水浴びをするため、川にきました。 そこには、川で体を洗う白ウサギがいました。 白ウサギは、カラスに言いました。 「あなたも、体を洗いにきたの? そんなに真っ黒じゃ、よーく洗わないとね。」 「いや、これは汚れではないので。」…

歩いていく【創作童話】

夫が倒れた。 左半分が麻痺して、動かなくなった。 退院して、リハビリに通って、マッサージもして、 それでも、歩く時は、杖が必要だった。 夫は、天気の良い日は散歩に行く。 杖をついて、ゆっくり歩く。 途中、休憩をして、また、ゆっくり歩く。 春には、…

神様の畑 【創作童話】

「神様、一日無事に過ごせますように。」 「神様、明日の試験に合格できますように。」 「神様、いつまでも、ラブラブでいられますように。」 今日も、人間たちは願い事を神様に頼みます。 空の上、神様の世界では・・・ 一人用の雲に乗った神様が、それぞれ…

立ち上がる勇気 【創作童話】

電車に乗り込む。 空いている席が優先席しかなかった。 ひとまず、優先席に座る。 次の停車駅で、マタニティキーホルダーをつけた人が乗ってきた。 優先席の私は、思わず、下を向いてしまった。 《キラキラリン》 電車では聞いたことがない音楽が流れた。 そ…

星の作り方【創作童話】

今、私はコンサートホールの客席に座っている。 今日は、娘のピアノの発表会だ。 ☆☆☆ 私の中学校には天文部があった。 部員は、ただ1人。 同じクラスの男子だった。 ある時、その男子に聞いて見た。 「天文部、楽しい?」 何気ない質問だ。 「うん、楽しい。…

気がつけば【創作童話】

お座りができるようになって… 気がつけば、 私が料理を始めると、必ず、私の事を「あー、あー」と大きな声で呼んだ。 仕方ないので、私のそばに座らせた。 ガス台の扉を開けて、鍋やフライパンを全部出して、嬉しそうに叩いて笑っていた。 ハイハイができる…

ボクはメガネ【創作童話】

よく見えないよね? だって、レンズがキズだらけだもん。 まず、その辺に無造作に置きすぎなんだ! レンズは必ず上向きに置いて欲しい。 これ、常識。 一日の終わりには、「お疲れ様」と言って、レンズを拭いて、ケースにしまって欲しい。 これ、希望。 はあ…

キヨシとゴン【創作童話】

目を覚ましたキヨシは、居間に歩いて行く。 ゴンの隣に座って、ゴンの顔をじっと見る。 ゴンはテレビを見ながら、うとうとしている。 キヨシとゴンが出会ってから、2週間が経った。 キヨシはゴンが大好きだった。 動作がゆっくりなのも、 テレビを見ながら寝…