ママ みつけてね【創作童話】

「ママ、かくれんぼしよう。

 10 かぞえたら、きてね。」

「わかったよ。」

 

ママは、こどもが隠れている間に家事を済ませちゃおうと考えた。

洗濯物を取り込みながら、「もういいかい?」と聞く。

小さな声で「もういいよ。」と聞こえた。

 

部屋を片付けながら、「探しにいくよー」と声をかける。

どこかから「いいよー。」と聞こえた。

「遊んで、遊んで」の催促がないから、家事が進む。

 

野菜を切りながら、「もういいかい?」と聞く。

あれ?返事がない。

何度も、何度も、「もういいかい?」と聞いた。

返事がない。

ママは、夕食の準備をやめて、本気で探し始めた。

 

 

 

わたしは かくれてる

ずっと かくれてる

ママ はやく みつけてくれないかな

 

 

 

「もういいかい?」大きな声で聞いた。

返事がない。

玄関の靴は、ある。

大丈夫、外には行っていない。

 

「もういいかい?」もっと大きな声で聞く。

返事がない。

お風呂を覗く。

大丈夫、溺れていない。

一つ、一つ、不安を消していく。

 

 

 

まっくらで こわくって でも じっとしてる

ほんとうは ひとりじゃ こわい

ほんとうは ママと いっしょに かくれたい

ママ 

ママ

はやく みつけてね

 

 

 

ママは、必死で探していた。

どこにいった?

全然、見つからない。

ベランダへの窓、鍵がかかっている。

大丈夫、外には行っていない。

 

クローゼットの中、やっと見つけた。

こどもはすやすや眠ってた。

暗くて、いつの間にか寝ちゃってたんだ。

ママは、ゆっくり抱っこした。

そっと、そっと、抱っこした。

 

 

 

 

「ママ?」

めをあけたら ママがいた

「みいつけた。」

ママが わらっていった

いつものやさしいママのかお

 

「ママ、みつけてくれて、ありがとう。」