眠れない【創作童話】

はっ!

目が覚めた。

朝?

ううん。真っ暗だから、まだ夜だ。

 

こんな夜に起きているなんて。

ママが知ったら、「寝なさい」って言われちゃう。

うん。寝よう。

 

はっ!

眠れない。

もう一度目をとじる。

 

はっ!

眠れない。

どうしよう。

 

さっきからパパがうるさい。

ガーガー言っている。

もしかして、パパが怪獣になっちゃた?

 

大変だ!パパ怪獣を倒さないと!

パパのお腹をたたいた。

パパの耳をつねった。

パパの鼻をつまんだ。

 

ふう。やっと、パパ怪獣からパパに戻った。

よかった。

もしかして、ママも怪獣になってる?

 

「ママ」と呼んでみる。

「遅刻するから、急いで。」

大丈夫だ、いつものママだ。

 

さあ、これで眠れる。

 

はっ!

眠れない。

時計がカチカチうるさい。

いつもは、こんなにうるさくないのに。

もしかして、ぼくの耳が大きくなっちゃった?

 

大変だ!ぼくの耳、小さくなあれ。

耳をさわって、異常なし。

耳をふさいで、異常なし。

なんだ、大丈夫だ。

 

さあ、寝よう。

 

はっ!

眠れない。

ミシっと音がした。

おばけ?妖怪?・・・

泥棒だあ!!

 

もう一度、ぼくの耳、大きくなあれ。

耳をすます。

なんの音もしない。

もう、外に逃げたのかもしれない。

 

カーテンを開けた。

まだ泥棒がウロウロしているかもしれない。

キョロキョロ見たが、誰もいない。

 

ふう。これで眠れる。

 

黒い空に白い月が小さく輝いている。

ダイヤモンドみたい。

そうか、泥棒はこの月を狙っていたんだ。

間違えて、うちに来ちゃったんだな。

良かった。

 

さあ、寝よう。

 

でも、泥棒が月を盗んじゃったら、どうしよう。

月がない夜なんて、寂しい。

 

バクバク、バクバク、ガチャと独特の音がする。

この音、知っている!

新聞屋さんだ。

もう大丈夫。

新聞屋さんがパトロールしてくれる。

良かった。良かった。

 

ふぁあああ。

もう寝よう。

 

ぼくは安心して眠りについた。