かぐや姫の真実【創作童話】

5歳になったかぐや姫。

毎晩、星に願い事をしています。

「早く大人になれますように」

それを聞いていたかぐや姫のお兄さん。

「地球という星にある竹は、ものすごい速さで成長するらしいよ。」

物知りのお兄さんは何でも知っています。

「でも、私は竹にはなりたくないの。」

「竹の中に入れば、同じ速さで成長できるんじゃないの?」

テキトウに答えるお兄さん。

「じゃあ、地球にはどうやって行けばいいの?」

「ほら、あの流れ星に乗っていけばいいんじゃない?」

どんどんテキトウになっていくお兄さん。

「そっかあ、ありがとう。」

 

かぐや姫は、早速、流れ星に乗って地球に行きました。

「流れ星って、初めて乗ったけど、意外と遅いのね。

 記念に星のカケラをもらっていこう。」

そう言いながら、流れ星をほんの少し削って、服の中にしまいました。

 

地球についたかぐや姫。

竹というものを探します。

お兄さんの話では、成長が早くて天まで伸びているそうだ。

すると、そこにおじいさんがやってきました。

かぐや姫は、とっさに隠れました。

「さてさて、竹を切って、今日は何を作ろうかな?」

おじいさんが竹と言ったのを、かぐや姫は聞き逃しませんでした。

あのおじいさんについていけばいいのね。

おじいさんが竹をバサッと切っていきます。

「あれが竹なのね?

 お兄さんの言った通りだわ。

 本当に天まで届きそうなくらい高いわ。」

かぐや姫は、おじいさんがいなくなると、竹に近づきました。

 

「問題は、この中にどうやって入るか、ね・・」

かぐや姫は腕組みして悩んでいました。

ふと、ポケットの固い物に手があたりました。

「そうだ、この流れ星のカケラにお願いしてみよう。」

かぐや姫はカケラを握りしめて、強く願いました。

竹の中に入れますように。

すると、体がどんどん小さくなっていきます。

そして、すうっと体が竹の中に吸い込まれていきました。

 

竹の中は暗く静かでした。

星のカケラがほんのり光っています。

かぐや姫は疲れて、そのまま眠ってしまいました。

 

「竹で今日は何を作ろうかな?」

おじいさんの声で、かぐや姫は目を覚ましました。

光る竹を見つけたおじいさんは、その竹を切りました。

かぐや姫とおじいさんはこうして出会いました。

 

おじいさんはかぐや姫を連れて帰りました。

かぐや姫は、おじいさんの腕の中で怒っていました。

こんな遠くの地球まで来たのに、

竹の中に入ったのに、

全然大きくならないじゃない!

お兄ちゃんのウソつき!!

小さくなっちゃったじゃん!!!

 

しかし、その後、不思議なことに、

かぐや姫は、どんどん成長していきました。

竹の中に入ったおかげなのか、

おばあさんの食事が美味しいからなのか、

あっという間に体は大人になりました。

やった!私、大人になっちゃった。

でも、心は5歳のこどものままでした。

 

大人になったかぐや姫には求婚してくる人がたくさんいました。

見た目は大人、心はこどものかぐや姫。

まだ結婚なんかしたくありません。

そこで、かぐや姫が考えた面白いものを見つけてくれた人と

結婚すると言いました。

そんな物、見つけられる人などいないのです。

だって、全部かぐや姫の想像なのですから。

 

その頃、月では・・

かぐや姫のお父さんが、かぐや姫がいないと心配していました。

月の捜索が始まりましたが、かぐや姫はどこにもいません。

かぐや姫のお兄ちゃんは、ハッとしました。

「まさか、本当に地球に行っちゃった?」

 

お兄ちゃんも必死に探しました。

でも、かぐや姫はどこにもいません。

やっと、ことの重大さに気がついたお兄ちゃん。

「かぐや姫が地球にいるかもしれない」

と、お父さんに言いました。

お父さんは早速、月から地球に遣いを出しました。

 

その頃、地球では・・・

かぐや姫は月を眺めていました。

大きくなったけど、どうやって月に帰るのか分からなかったのです。

星のカケラは、竹の中に置いてきてしまいました。

「はあ。」と大きくため息をついたときです。

月から遣いの者がやってきました。

 

「お父様は大変お怒りになっております。

 次の満月の夜、お迎えに上がります。」

 

かぐや姫は、ゾクっとしました。

お父さんが怒っている。

どうしよう。

怒られる。

帰りたくない。

 

かぐや姫の様子がおかしい。

おじいさんとおばあさんはすぐに気が付きました。

「何か、悩んでいるのか?」

かぐや姫に聞きました。

「次の満月に、月に帰らなければいけない。

 でも、帰りたくない。」

と、かぐや姫は伝えました。

 

満月の夜、月からの迎えが来ました。

かぐや姫は、泣きながら月に帰っていきました。

 

不思議なことに、月に帰ったかぐや姫の体は「こども」に戻っていました。

お兄ちゃんに大人になったと話しても、

全く信じてもらえませんでした。

 

 

1330stars.hatenablog.jp