おりがみ 【創作童話】

息子が車の種類を覚えた。

止まっている車、走っている車を見つけては、

「あれは、〇〇」と教えてくれるようになった。

それなら、ひらがなも分かるかも、と思った。

 

車のナンバープレートに書いてあるひらがなを教えた。

一つ一つ、覚えていく。

覚えたひらがなを見つけては、大きな声で言う。

褒められるから、どんどん、ひらがなが読めるようになった。

 

ひらがなを一通り読めるようになった。

少し怪しいのもあるが、だいだい合っている。

ひらがなが書いてある積み木で、自分の名前を並べていた。

それなら、ひらがなが書けるかも、と思った。

 

鉛筆を持たせて、線を書かせてみた。

鉛筆がうまく持てない。

線が薄すぎて見えない。

不器用なのか?手に力がないのか?

ひらがなを書くのを、諦めた。

 

年少さんになり、時々、折り紙を持って帰ってくる。

半分に折っただけのものは、車だと言う。

三角形に折っただけのものは、魚だと言う。

クレヨンでグルグル丸が書いてある。

クレヨンなら、書けるのかと、驚いた。

 

次第に、折っていない折り紙を持って帰ってくるようになった。

クレヨンでグルグルかいた折り紙に

先生の文字で、車の名前が書いてあった。

毎日、同じ色のグルグルに、違う車の名前が書いてあった。

こっちのグルグルと、あっちのグルグルの違いは、

息子にしか分からない。

 

お持ち帰りしてきた折り紙が箱にいっぱいになったころ、

チューリップとか形のあるものを持って帰ってきた。

息子が「これ、なんだ?」と嬉しそうに聞く。

「チューリップ」と答えると、満足そうに笑った。

 

年中さんになって、折り紙にシールを貼ってくるようになった。

四角に折った折り紙に、丸いシールが4個。

嬉しそうに折り紙の車を走らせている。

折り紙の車とミニカーで、競争をしている。

なぜか、折り紙の車が勝つから、面白い。

 

そんなある日、車ではない折り紙を持って帰ってきた。

二回折って、真四角になった折り紙。

頑丈にシールが貼ってある。

「開けてみて。」

息子が嬉しそうに言った。

丁寧にシールをはがす。

折り紙を一回、二回広げた。

クレヨンで、「だいすき」と折り紙いっぱいに書いてあった。

車の名前でもなく、

自分の名前でもなく、

「だいすき」を書いた息子を思わず抱きしめた。

 

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