にいに ばんざい【創作童話】

あかちゃんが うまれた。

ぼくは にいちゃんになった。

 

ぼくは「いない いない ばあ」をした。

あかちゃんは ちっとも わらわない。

もういちど「いない いない ばあ」をした。

パパが「まだ わからないみたいだね」と いった。

 

ぼくは ようちえんにいくまえに かならず

「おにいちゃん いってくる」と あかちゃんに いう。

おにいちゃんがいないよーって

あかちゃんがないたら かわいそうだから。

 

あかちゃんは すこしおおきくなった。

ぼくをみつけると、ばんざいをするようになった。

ママが「おにいちゃんが だいすきなんだね」といった。

 

ぼくは しょうがくせいになった。

あかちゃんが、ぼくのことを「にいに」とよぶようになった。

がっこうにいくとき、

あかちゃんは おおきなこえで「にいにー」とよぶ。

ぼくは、おおきく てをふってあげる。

 

ぼくが がっこうから かえると

あかちゃんは すぐに ぼくのところにくる。

そして ぼくから はなれない。

しゅくだいをするときも となりにすわっている。

ぼくは「トイレにいってくるから まってて」といった。

 

トイレから もどって

「ママー」とおおきなこえで ないたのは

あかちゃんではなく ぼくだった。

あかちゃんが ぼくのえんぴつで 

きょうかしょに なぐりがきをしていた。

 

「これは、ぼくのきょうかしょ」

「ぼくの だいじな きょうかしょ」

「もう やだ」

「もう がっこうに いかない」

「もう にいに やめる」

ぼくは いっぱい ないた。

あかちゃんも いっぱい ないた。

 

つぎのひ。

あかちゃんは いつもどおり「にいにー」ってさけんでたけど

ぼくは てをふらなかった。

 

がっこうで きょうかしょをひらいたら

あかちゃんのかいた なぐりがきは きえていた。

きっと ママが けしごむで けしたんだ。

 

やすみじかん。

ともだちと はなしていたら

うっかり「にいには・・」といってしまった。

にいに やめたはずなのに・・・。

 

かえりみち。

はなが さいていた。

ちいさくて かわいい はな。

ぼくの あかちゃんみたいに ちいさな はな。

 

「ただいまー」

あかちゃんは すぐに ぼくのところにきて

ばんざいをした。

「ごめんなさい は?」

あかちゃんは また ばんざいをする。

ぼくのことが だいすきなんだ。

しょうがない。

ゆるしてあげる。

 

「はい おみやげ」

ぼくは ちいさい はなを あかちゃんに みせた。

かえりみちで ひろった はな。

あかちゃんが たべようとするから

ぼくは かびんに かざることを おしえてあげた。

ふたりで かびんのはなを みていた。

また あかちゃんが ばんざいをした。

ぼくも いっしょに ばんざいをした。

 

ぼくね

ママが「おなかのなかに あかちゃんがいるよ」

って おしえてくれたとき

「もうすぐ おにいちゃんになるんだよ」

って おしえてくれたとき

うれしくて ばんざいして よろこんだんだよ。