ドーナツのこころ 【創作童話】

 今日のおやつは、ドーナツ。

ドーナツのあなから、ママを見る。

「早く、食べなさい。」

「ママ、見て。

 心にポッカリ、あながあく。」

ドーナツのあなから、指をだす。

「はあ。」

ママ、このことば、しらないのかな。

まあいいや。

ドーナツって、なんでこんな形なんだろう。

ちぎって、ちぎって、ちぎって。

ならべて、ならべて、ならべて。

「ママ、なんの形でしょう?」

「顔。」

「ブッブー。

 ちがいます。

 こころ。

 心という漢字だよ。

 今日、習ったの。」

「あー。

 心ねえ。」

「心って、書くのがむずかしいんだよ。」

「そうなの?」

「スカスカだから、バランスがむずかしいの。

 でも、ドーナツで書いたら上手くできた。」

「よかったね。

 遊んでないで、食べたら?」

「はーい。

 ねえ、ママ。

 なんで、心はスカスカなのか知ってる?」

「えー、なんでだろう。」

「せいかいは、ギュウギュウだと入らないからです。」

「なにが?」

「やさしい、き・も・ち。」

「へえー。

 すごいね。

 先生がおしえてくれたの?」

「そうだよ。

 やさしいきもちで、心っていう字をれんしゅうしてくださいって。」

「なるほど。」

「ドーナツ、もうひとつ、たべてもいい?」

「たべすぎでしょ?」

「やさしいきもち、やさしいきもち。」

 

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