「神様、一日無事に過ごせますように。」
「神様、明日の試験に合格できますように。」
「神様、いつまでも、ラブラブでいられますように。」
今日も、人間たちは願い事を神様に頼みます。
空の上、神様の世界では・・・
一人用の雲に乗った神様が、それぞれに空を飛んでいます。
あっちこっちに動き回る神様もいれば、
ずっと同じ場所にいる神様もいます。
神様は、手に長い棒を持っていて、人間界を見ています。
すると、ある神様の長い棒がピカッと金色に光りました。
人間界で、喜んでいる人がいます。
神様は、うんうんとうなずきながら、その姿を確認すると、
また別の場所に飛んでいきました。
神様の持っている棒は、人間の願いが届いた時に光ります。
男の子が、道端に落ちている棒を見つけました。
それを拾おうと手を伸ばしたとき、
「さわるな!」
と大きな声が聞こえました。
目の前には、おじいさんが立っています。
「驚かせて、悪かった。
これは、危ない棒で、触ると大変なことになるところだった。」
おじいさんは、訳の分からない説明をしましたが、
もうすでに、男の子は、その棒を手に持っていました。
「何も、起きないよ。」
男の子は、そのまま、棒を持っていこうとします。
「あー、ちょっと待て。
それは、私の大切な棒でな、拾ってくれてありがとう。
返してもらうよ。」
「やだ。お父さんに焚き火に使う木を拾ってきて、
と頼まれているんだ。」
「棒を燃やす?
そんなことしたら、大変じゃ。
代わりの木なら、そこら辺にいくらでもあるだろう。」
「これが、いい。」
男の子は、全く譲ろうとはしません。
「わかった。お礼をしよう。
1つだけ、願いを叶えてあげよう。」
「じゃあ、この棒をください。」
「それは、無理なんだが・・・
他の願い事、何かないのか?」
「願い事なんて叶わない。
神様だって、無理だったんだから。」
男の子は、プイッと横を向いた。
「神様にだって、願いを叶えるルールがあるって知っているか?」
「なに、それ。」
「では、それを教えてあげよう。
君は人参畑に行った。
そこで、君はトマトが食べたいと言う。
君は、トマトを食べられるかな?」
「無理だよ。人参しかないんだから。」
「そう、神様も同じ。
それぞれの神様には、畑があるんだ。
恋愛成就の畑、商売繁盛の畑・・・。
自分の畑以外の願いは叶えられない。
君が、交通安全の神様に、学問や子宝の願い事をしても、
叶わないんだよ。
分かったね。はい、棒を返して。」
「やだ。ぼくは、チャンスの神様にお願いしたんだ。
ゴールを決められますようにって。
逆転のチャンスだったのに。
でも、ぼくは・・・。」
「そうだ、もう1つ大切なルールがあった。
神様は、いつも同じ場所にはいない。
より多くの人間の願いを叶えるために、あっちこっちへ移動している。
だから、ちょうど、君の上にチャンスの神様が来た時に、
お願い事をしなくちゃならない。
君が願い事をした時、
君の上にいた神様は、健康とか金運の神様だったんだろうな。
だから、願いは届かなかった。」
「神様は、ずるい。」
「いいか、少年。
チャンスは、また来る。
忘れるな。次のチャンスは、必ず決められる。」
おじいさんの言葉と同時に棒が金色に光った。
男の子は驚いて、とっさに棒を離した。
次の瞬間には、棒もおじいさんも消えていた。
12年後。
空の上、神様の世界・・・
神様が見下ろした先に
男の人が仲間に囲まれて、喜んでいる姿が見えました。