オルゴールの音楽が鳴りました。
クマさん、リスさん、ネコさんは、ルンルンとお尻を振りながら、こっこちゃんの周りに集まってきました。
こっこちゃんは、みんながきちんと座っているのを確認してから、
「いただきます。」
と、元気な声で言いました。
まず、クマさんが大きな前掛けを直して、ご飯をパクリ。
次は、リスさんが鼻をクンクンしてから、卵焼きをモグモグ。
ネコさんは耳のリボンを自慢しながら、ご飯をパクパク。
「おいしいね。」
こっこちゃんもニコニコしながら、ご飯を食べます。
こっこちゃんの笑顔に、クマさんも嬉しそうに「うんうん」と頷いています。
近くのツバメの巣では、帰ってきた親鳥の姿を見つけたヒナたちが、「ピーピー」と大きな声を出しています。
親鳥は大きな口を開けたヒナたちに、順番にごはんをあげています。
次の日、ゾウさんも仲間になりました。
初めは、こっこちゃんとクマさんの2人でご飯でしたが、2日目にはリスさんが、3日目にはネコさんがきました。
オルゴールの音楽が鳴り、ご飯の時間です。
クマさん、リスさん、ネコさん、ゾウさんは、こっこちゃんの周りに集まり、きちんと座っています。
でも、今日のこっこちゃんは、なかなか「いただきます」を言いません。
口を横一文字にして、目を細めて、じとーっとクマさんたちを見ています。
クマさん、リスさん、ネコさん、ゾウさんは、にっこり顔で待っています。
こっこちゃんは、しばらくクマさんたちを見ていましたが、仕方がないと諦めて、ため息混じりに
「いただきます。」
と、言いました。
まずは、ゾウさんが長い鼻を持ち上げて、ごはんをバクッ。
次は、クマさんが大きな前掛けが斜めのまま、煮物をパクリ。
ネコさんは、耳のリボンが解けたまま、ごはんをパクパク。
こっこちゃんは、少しだけ口を開けて、ご飯を食べました。
「きょうは、ちっともおいしくないね。」
こっこちゃんは、煮物を箸でツンツンしながら、隣にいるリスさんのように、ほっぺをぷうっと膨らませました。
ツバメの巣では、親鳥がごはんをあげ終わり、休む間もなく飛び立っていきました。
「ピーピー」と騒がしかったヒナたちは、急に静かになり、親鳥の帰りをじっと待っています。
夕方、ママがウサギのぬいぐるみを持って、こっこちゃんの病室に来ました。
「こっこちゃん、今日は、ご飯を残したんだって?」
こっこちゃんは、ベッドの上でお山座りをして、下を向いています。
「今日から、ウサギさんも仲間に入れてね。みんなでご飯を食べようね。」
ママは明るい声ですが、こっこちゃんはどんどん膝の間に顔を沈めていきます。
ママは、こっこちゃんのベッドに座り、ウサギのぬいぐるみにお辞儀をさせながら、
「よろしくね。」
と、高い声で言いました。
こっこちゃんは、ウサギのぬいぐるみを掴み、ポイっと投げて、ママを睨みました。
「わたしは、ママとパパと、かぞくみんなで、ごはんがたべたいの!」
こっこちゃんの目から涙が溢れ出しそうです。
ママは何も言わず、床に転がったウサギのぬいぐるみを拾い、こっこちゃんを優しく抱きしめました。
次の日。
オルゴールの音楽が病室に流れました。
こっこちゃんは、ゆっくりと自分の周りに、クマ、リス、ネコ、ゾウ、ウサギのぬいぐるみを座らせました。
オルゴールの音楽が終わり、病室は静かになりました。
こっこちゃんは、病室の白い壁、白い天井を見つめ、クマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめました。
もうすぐ、看護師さんがご飯を運んできます。
「こっこちゃん、ご飯ですよ。」
病室のドアを開けたのは、ママでした。
手を振るママの後ろから、パパが顔を出しました。
こっこちゃんは、目を丸くして、驚いています。
パパの後ろから、お姉ちゃんが顔を出し、お姉ちゃんの後ろから、お兄ちゃんが顔を出しました。
こっこちゃんの顔が、どんどん明るくなっていきます。
お兄ちゃんの後ろから、おじいちゃんが顔を出して、おじいちゃんの後ろから、おばあちゃんが顔をだしました。
こっこちゃんは嬉しさと恥ずかしさで、ドキドキしています。
「こっこちゃん、今日は、みんなでご飯を食べようね。」
ママが言い終わる前に、お姉ちゃんとお兄ちゃんは、こっこちゃんのベッドに走っていきました。
こっこちゃんの周りにぬいぐるみたちが集まって、その周りに家族が集まって、今日はみんなでご飯です。
こっこちゃんは弾ける笑顔で、
「いただきます!」
と、言いました。
窓の外のツバメの巣では、ヒナたちが羽をバタバタさせて、飛び立つ準備をしています。