ふるさとを探して【創作童話】



ガタゴト、ガタゴト、トラックが走っています。

トラックの荷台には、たくさんの野菜が乗っています。

 

「なんで、こんなに暑いの?
 私のふるさとは、もっと涼しかったわ。」

きのこさんは、汗がダラダラです。

「きのこさんのふるさとは、涼しい所なんだね。」

カボチャさんが、太い声で言いました。

「ふるさとって、なあに?」

にんじんくんが不思議そうに聞きました。

「ふるさとは、自分が育ったところだよ。

 ボクのふるさとは、お日様がいっぱいのところだよ。

 だから、これくらいの暑さは、へっちゃらだよ。」

カボチャさんが、えっへんと自慢しています。

にんじんくんは、自分のふるさとを思い出してみました。

うーん、うーん。

全然、思い出せません。

他の野菜たちも、自分のふるさとの話をワイワイと話しだしました。

「ボク、ボクのふるさとを探してくる!」

にんじんくんは、トラックの荷台から外に飛び出しました。

 

にんじんくんは、トラックが来た道を戻ります。

すると、後ろから、声がしました。

「待ってえー、待ってよー。」

さつまいもさんが、ドシンドシンと走ってきます。

「どうしたの?」

「わたしも自分のふるさとを探したいの。

 一緒に行ってもいい?」

「うん!」

二人は、仲良く歩き出しました。

 

黄色い稲穂が風にゆらゆら揺れています。

にんじんくんとさつまいもさんは、大きな声で言いました。

「ここは、だれのふるさとですか?」

「ここは、お米のふるさとですよ。」

風に乗って、サラサラした声が答えました。

 

大きなビニールハウスがたくさんあります。

にんじんくんとさつまいもさんは、ビニールハウスを覗き込んで、小さな声で言いました。

「ここは、だれのふるさとですか。」

「ここは、イチゴのふるさとよ。」

可愛い声が答えました。

 

にんじんくんの足が、急にぴたっと止まりました。

うーん、うーん。

にんじんくんは、りんごの木を見ながら、考えています。

「ボクのふるさとは、木の上かもしれない。」

さつまいもさんも、りんごの木を見上げました。

「きみたちは、野菜でしょ。

 木がふるさとなのは、果物だけさ。」

りんごさんが、爽やかに教えてくれました。

 

また、にんじんくんの足がぴたっと止まりました。

「ひらめいた!

 あのカラスさんに頼んで、ボクたちをふるさとまで運んでもらおうよ。」

「ダメ、ダメ、ゼッタイにダメ!

 カラスさんは、わたしたちのことを美味しそうに食べるのよ。」

にんじんくんとさつまいもさんは、カラスに見つからないように、

こっそりひっそり歩きました。

 

またまた、にんじんくんの足がぴたっと止まりました。

「とっても、いい香りがする。」

にんじんくんが香りのする方に走って行きました。

さつまいもさんも、ドシンドシンと後を追いかけます。

小さな葉っぱが列を作って、きれいに並んでいる畑につきました。

「きれいだね。」

「うん、きれいだね。」

にんじんくんとさつまいもさんは、大きな声で言いました。

「ここは、だれのふるさとですか?」

「ここは、にんじんのふるさとです。」

元気な声が返ってきました。

「やったあー。」

にんじんくんとさつまいもさんは、ジャンプして喜びました。

 

「にんじんくん、良かったね。

 次は、わたしのふるさとね。

 ここからは、一人でがんばるわ。」

さつまいもさんがにんじんくんの手を握りました。

「さつまいもさん、ボクも一緒に行くよ。

 ボクも、さつまいもさんのふるさとが知りたいんだ。」

「いいの?

 嬉しい。ありがとう。」

さつまいもさんの目にうっすら涙が浮かんでいます。

「さつまいものふるさとは、ここですよ。」

と、どこからか、声が聞こえました。

「さつまいものふるさとは、ここですよ。」

今度は、はっきり聞こえました。

さつまいもさんは、ドシンドシンと声のする方に走っていきました。

にんじんくんのふるさとの隣に、ハート型の葉っぱが生い茂っている畑がありました。

にんじんくんとさつまいもさんは、大きい声で言いました。

「ここは、だれのふるさとですか。」

「ここは、さつまいものふるさとです。」

土の中から、優しい声が聞こえました。

 

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