望んだ未来じゃない【創作童話】

村にテレビという物を設置したいと、

見知らぬ国の見知らぬ人たちがやって来た。

 

村の中心にテレビを置くと、

国の偉い人たちが決めたそうだ。

 

村の色々な場所を、色々な機械で調べている。

村人以外の人たちが、聞いたことのない言葉で話している。

 

そのテレビを置くために、

木が切り倒され、重機が村を走る。

 

村に電気がついた。

夜も明るいと、知らない国の人が喜んでいる。

 

テレビが付いた。

国の偉い人がきて、盛大にお祝いする。

 

テレビの中で、「花火」がドンドンと音を出す。

「キレイでしょう。」

自慢げに、テレビを付けた人が言う。

 

村にいた鳥を、最近見なくなった。

村から見えた星を、最近見なくなった。

 

毎日、明るい。

毎日、うるさい。

 

これは、誰が、望んだ風景?

これは、誰が、決めた未来?

 

知らない国の人の価値観を

勝手に押し付けた。

 

この村に住む人の意見も聞かずに

この村を変えた。

 

村人たちは、テレビがなくても幸せだった。

村人たちは、電気がなくても幸せだった。

 

見知らぬ国の人たちが、見知らぬ国に帰っていく。

村人たちは、これからも、この村で生きていく。

 

望んだ未来じゃない「今」を村人たちは、どう生きる?

テレビを使わずに、電気を使わずに、

今まで通り生きることもできる。

テレビを大いに使い、電気を利用して、

今まで以上の生活をすることもできる。

 

村人たちが望んだ未来にするために、

村人たちが今できること。

 

「いつか、村で本物の花火をあげよう。」

テレビに写った花火を見ながら、村の若者が呟いた。

 

 

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