この子が生まれてから、毎日謝ってばかり。
昼寝をしている我が子を見ながら、ため息が出てしまう。
この子がお腹の中にいた時は、
会いたくて、会いたくて、仕方がなかった。
いっぱい遊んで、いっぱい可愛がって、
そんな日々を夢見ていた。
でも、今は…
一歩外に出れば、
スーパーで走り回る子供を追いかけながら、「すみません」
公園で他の子のオモチャを取ってしまって、「すみません」
道路に飛び出しそうになって、「すみません」
毎日毎日、謝ってばかり。
家の中に入れば、
「自分でできる」と言って、牛乳をこぼし、
ブロックがくっつかないと、泣いて、
玄関の靴を部屋に並べて、ドヤ顔をして、
毎日毎日、この子に振り回されて、正直、もう限界。
お昼寝をしてくれている時間だけが、ホッとできる。
本当は、もっと上手に子育てできると思ってた。
本当は、もっと子育ては楽しいと思ってた。
そんなことを考えながら、この子の寝顔を見ていたら、何もできず時間が過ぎて行く。
そっと頭を撫でていたのに、うっかり子供を起こしてしまった。
「起こしちゃって、ごめんね。」
まだ夢と現実の間を彷徨って、この子がぼーっとしている間に、私は重い腰を上げ、冷蔵庫を確認する。
「買い物に行かなくちゃ。」
平日の昼間のスーパーは空いている。
今日は、お昼寝をした後だからか、機嫌が良い。
カートにお利口に座っている。
良かった、順調に買い物ができた。
足早にレジに向かう。
あとは、会計だけ、のはずが…
突然、天井を指差して、
「あれが欲しい。」
と言い出した。
スーパーの天井から赤や青の大きな風船がぶら下がっている。
この間は、無かったのになあ。
「取って、取って。」
と、静かなスーパーにウチの子の声が大きい。
周りにいる人たちの注目を浴びている。
やっぱり今日も謝るのか。
「すみません」と言いかけた、その時。
幼稚園生くらいの男の子が、ウチの子に近づいてきた。
そして、「どうぞ」と言って、ウチの子の小さな手に折り紙をのせた。
男の子は、ササっと走っていってしまい、ウチの子は手の中を見つめている。
いつの間にか、周りの人もいなくなり、今のうちだと、私は急いでレジに向かった。
スーパーを出て、子どもの手の中を見ると、それは折り紙で作った風船だった。
私が息を吹いて、紙風船を膨らませると、びっくりして、「元に戻して!」と怒った。
夜、子供が寝てから、握ったままの手の中から紙風船を取り出した。
大事にして、離さなかった紙風船。
私は、この子が生まれてから、周りはみんな敵だと思っていた。
でも、今日、小さなヒーローが現れて、私たちを救ってくれた。
この子も、あんなふうに育ってくれたらいいなあって思った。
毎日毎日、謝ってばかりだけど、今が全部じゃない。
この子は成長する。
この子には未来がある。
私は今日、小さなヒーローから希望をもらった。