お店屋さんごっこ 【創作童話】

「はーい。

 今日は、クレープとケーキがあります。

 早く買いに来てください。」

娘のお店屋さんごっこが始まった。

いつもは、ママや透明なお客さんが買いにくる。

 

この間は、確か、お弁当屋さんだったかな。

ママが注文をする。

「幕の内弁当ください。」

「マクド弁当は、ありませんっ。」

娘が腕で大きくバツをする。

「じゃあ、何がありますか。」

「シチュー弁当があります。」

など、ママと娘のやり取りを見ているのは楽しい。

 

娘のお店屋さんは、なかなか面白いものを売っている。

「今日は、ほうれん草とジャガイモとみかんで、

 カレー屋さんです。

 はーい、食べにきてくださーい。」

と、言っていた時もあった。

「今日は、おにぎり屋さんです。

 野菜のおにぎりとリボンのおにぎりがありまーす。」

と、言っていた時もあった。

 

そして、今日はクレープとケーキ屋さんだ。

娘は、ダンボールの中に入って、準備オッケーのようだ。

「パパ、早く買いにきてください。」

「え?パパ?ママじゃなくて?」

いつもは、ママがいいっていうのに、珍しいなあ。

「じゃあ、クレープをください。」

「クレープはありませんっ。」

娘が腕で大きなバツを作る。

「え?クレープ屋さんなのに?

 じゃあ、ケーキをください。」

「こちらが、メニューでありまーす。」

娘の手作りのメニューを渡された。

「すごい。メニューがあるんですねえ。」

メニューを開く。

娘の字で、いちご、ぶどう、みかん、めろんと書いてある。

「おすすめは、いちごでーす。」

「じゃあ、いちごのケーキをください。」

「はーい。かりこまりました。」

娘が手を額に当てて、敬礼のポーズをする。

「かしこまりました」と言えないところも、可愛いなあ。

なんて思っていたら、まさか、本物のショートケーキが出てきた。

「パパ、いつも、ありがとう。」

「ど、どうしたの?」

娘がモジモジしている。

ママの顔を見る。

「ケーキがどうしても食べたいって言うから、買ったの。

 そしたら、パパと一緒に食べるんだって。」

 

娘とケーキを半分ずつ食べるのかと思ったが、

パパにくれたのは、ほんの一口だけだった。

それでも、娘の気持ちが嬉しかった。

美味しそうにケーキを食べる娘の顔を見ていたら、

お腹いっぱいになった。

 

娘のお店屋さんには、本当にいろんな物が売っている。

今度は、なに屋さんになるのかな?

 

 

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