パパと一週間【創作童話】

妻が入院した。

もうすぐ三人目が生まれる。

今日から上の子二人とパパで1週間過ごす。

一日のスケジュールも作った。

子育ても、家事も、完璧にやってやる!

 

1日目。

朝ごはん。

「ママとじゃなきゃ、食べない。」

と大泣き。

大幅な時間ロス。

洗濯物を干し忘れた。

 

2日目。

気がつくと、いつも何かをこぼしている。

拭き掃除が終わって、また拭き掃除、拭き掃除・・・。

洗濯物を取り込み忘れた。

 

3日目。

朝ごはん。

「また、ふりかけ?」と娘に言われる。

息子が生卵を食べられないなんて、初めて知った。

 

4日目。

気分転換に外遊び。

息子のポケットから大量の砂。

家中、砂だらけ。

掃除、風呂、寝る。

 

5日目。

寝坊した。

ゴミ出し、間に合わず。

 

6日目。

夕食、カップラーメン。

 

夜、こどもたちと布団に入った。

激動の一週間が終わった。

明日は、妻と赤ちゃんが退院する。

娘が「これ、なに?」と紙を持ってきた。

「一日のスケジュール」だった。

あーあ、何もできなかった。

何一つ、うまくいかなかった。

「はあ。」

ため息をついた。

「パパ、一緒に寝てくれて、ありがとう。」

娘が笑って言った。

できないパパを励ましてくれている。

「パパ、ラーメン、おいしかった。」

今度は、息子が言った。

「パパ、お仕事休んでくれて、ありがとう。」

また娘が言う。

「パパ、ラーメン、ありがとう。」

また息子がいう。

「パパ、遊んでくれて、ありがとう。」

また娘が言う。

いつの間にか、ありがとう合戦になった。

たくさんの「パパ、ありがとう。」が寝室に響く。

こどもたちのテンションが収まらない。

 

やっと寝た。

二人の寝顔を見ていたら、急に涙があふれた。

何もできなかった。

何もしてやれなかった。

それなのに・・・

子どもたちは「ありがとう」を言ってくれた。

できなかったことじゃなく、

できたことだけをみてくれていた。

一週間、一緒に過ごせて良かった。

二人の頭を優しく撫でた。

 

「生まれてきてくれて、ありがとう。

 パパにしてくれて、ありがとう。」

 

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