気がつけば【創作童話】

お座りができるようになって…

気がつけば、

私が料理を始めると、必ず、私の事を「あー、あー」と大きな声で呼んだ。

仕方ないので、私のそばに座らせた。

ガス台の扉を開けて、鍋やフライパンを全部出して、嬉しそうに叩いて笑っていた。

 

ハイハイができるようになって…

気がつけば、

ヨダレを垂らしながら、料理中の私の所まで、ハイハイしてきて、足にしがみついて、抱っこして!とアピールした。

仕方ないので、抱っこしながら、片手で料理をした。

 

歩けるようになって…

気がつけば、

オモチャを次から次へと持ってきて、一緒に遊ぼうと言った。

よく分からないことを、「すごいでしょ?」と自慢げに見せてくれた。

 

幼稚園に通うようになって…

気がつけば、

いつも私の膝の上に座り、絵本を読んだり、ご飯を食べたりした。

少し重くなったし、膝の上でいろいろ動くので、足もお尻も痛かった。

 

小学生になって…

気がつけば、

ずっと外で遊んでいた。

親より友達の方が大事になって、嬉しそうに出かけていった。

まだ帰って来ないのかと、いつも時計を見ながら待っていた。

 

中学生になって…

気がつけば、

部活、部活の毎日になり、「あれが必要。」「これ、大事な手紙」くらいしか会話しなくなった。

何を聞いても、面倒くさそうに答えた。

 

高校生になって…

気がつけば、

手も足も私より大きくなって、私を見下ろして、話すようになった。

親の知らない自分の世界を謳歌していた。

 

気がつけば、

子供は、あっという間に大きくなってしまうのに、

どうしてもっと早く気がつかなかったのだろう。

今、このかけがえのない時間が永遠ではないことに。

気がつけば、

臆病なところも、ふざけたところも、優しいところも、笑ったところも、泣いた顔も、

その全てが可愛くて、愛おしくて、大好きで、

気がつけば、

あなたのおかげで、私は親になれました。